
「一瞬のしびれ」が脳からの危険信号かもしれません
「急に手がしびれた」「言葉が出にくい」「片方の目が見えにくい」──
こんな症状が数分で治ってしまうと、「大したことなかった」と思ってしまう方も多いでしょう。
しかし、それは脳梗塞の前触れである可能性があります。
このように、短時間で症状が消える発作を「一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)」といいます。
症状が消えるため軽く見られがちですが、実は体が発している重大な警告サインなのです。
一過性脳虚血発作(TIA)とは?
一過性脳虚血発作とは、脳に一時的に血液が届かなくなる状態のこと。
脳は常に大量の酸素と栄養を必要としていますが、血流がほんの数分でも途絶えると、手足や言葉、視覚などを司る神経が一時的に働かなくなります。
典型的な症状は次のようなものです
- 片側の手足や顔がしびれる、動かしにくい
- ろれつが回らない、言葉が出てこない
- 片方の目が見えにくい、視野が欠ける
- ふらついて立てない、バランスを崩す
これらの症状は多くの場合、数分〜数十分で自然に治まります。
しかし、「治った=問題なし」ではなく、「脳梗塞の一歩手前」という非常に危険な状態です。
なぜ起こるのか?主な原因
一過性脳虚血発作の多くは、動脈硬化や心臓の異常が関係しています。
① 動脈硬化による血管のつまり
加齢や生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)により、首の血管(頸動脈など)が硬くなります。
そこにできた血栓(血のかたまり)がはがれて脳の血管を一時的にふさぐことで、TIAが起こります。
② 心臓でできた血栓が飛ぶケース

特に心房細動という不整脈を持つ方は、心臓の中に血栓ができやすく、それが脳へ流れて一瞬詰まることがあります。
この場合も、早期の検査と治療が重要です。
症状が消えても危険な理由
実際に、一過性脳虚血発作を起こした方の約15〜20%が3か月以内に脳梗塞を発症しています。
さらに、その半数は発作から48時間以内に脳梗塞を起こすといわれています。
つまり、「もう治ったから大丈夫」と思っているその2日間こそが最も危険な期間なのです。
脳の病気は、時間との勝負。
少しでも異変を感じたら、ためらわず脳神経外科を受診することが大切です。
当院の対応:脳の異変を見逃さないために
ながしま脳神経外科リハビリクリニックでは、
・必要に応じて即日MRI検査を実施
・当日中に検査結果をお伝え
・経験豊富な脳神経外科医が診断・治療方針を決定
という体制を整えています。
脳の異常は“待てば悪化する”可能性があります。
「少しおかしいな」と思ったその瞬間が、脳を守る第一歩です。
次回(後編)では、
一過性脳虚血発作が疑われたときの検査の流れ、実際の治療法と再発を防ぐ生活習慣について詳しく解説します。
