脳神経外科ブログ

片頭痛の新しい予防薬として知られている『CGRP』とは?

2025.06.26
片頭痛の新しい予防薬として知られている『CGRP』とは?

繰り返す片頭痛に悩まされている方にとって、「また来るかも…」という不安を抱かれる方は少なくありません。そんな中、最近では「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という片頭痛に関わる物質を抑えることで、発作を防ぐ新しい予防薬が注目を集めています。

「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」といった薬剤は、従来の予防薬で効果を感じられなかった方にも有効であり、自己注射で簡便に使用できることから、多くの患者様の新たな希望となっています。


本記事では、これらの治療薬がどのように作用し、どのような方に適しているのかをわかりやすく解説します。

片頭痛治療薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)とは

エムガルティ、アジョビ、アイモビーグは、近年登場した最新の片頭痛治療薬で、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という片頭痛に関わる物質を抑え、片頭痛の発作を緩和したり、予防したりすることを目的として開発されました。CGRPの働きを抑えることで、発作の頻度や重症度を軽減する効果が期待されています。

エムガルティとアイモビーグは月1回、アジョビは月1回または3ヶ月に1回の頻度で自己注射が可能なペン型デバイスを使って投与されます。特に従来の治療で効果が得られなかった慢性片頭痛の方にとって、有力な治療の選択肢となっています。ここからは、エムガルティ、アジョビ、アイモビーグについてそれぞれの治療薬について解説していきます。

エムガルティ(Emgality)

エムガルティは、片頭痛の頻度や重症度を軽減する目的で使用される、比較的新しいタイプの治療薬です。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体アンタゴニストとして、片頭痛の発生頻度を減らすことを目的に使用されており、脳の血管周辺に存在するCGRP受容体に作用することで、炎症や血管拡張による痛みの連鎖を断ち、根本的な予防につなげます。

従来の薬で効果が得られなかった方にも有効性が認められ、特に発作の頻度が多い方にとっては、自己注射で簡便に使える点や、副作用が比較的軽度である点も魅力の一つです。

また、月経関連片頭痛に対して高い効果を示すことが報告されており、女性に多いホルモン変動に関連した片頭痛において、従来の予防薬では十分に抑えられなかったケースでも効果が期待できるため、多くの女性にとって心強い存在となっています。

使用方法

月に一度、自己注射可能なペン型デバイスを使って皮下注射します。

医師の指導のもとで初回は医療機関で注射を行い、その後は自宅で継続するケースが一般的で、注射部位は腹部や太ももなどを選ぶことが多く1分ほどで完了します。

効果

発作日数の減少が期待され、臨床試験でも多くの患者様で改善が見られています。さらに、発作時の痛みの程度や、発作による活動制限の軽減も報告されており、日常生活への影響を大幅に抑えることができます。

副作用

注射部位の反応や便秘、かゆみなどの副作用が報告されていますが、一般的には耐えられる範囲のものとされていることから、副作用の頻度は比較的低く、長期的に使用しても安全性が高いと評価されています。

アジョビ(Ajovy)

アジョビ(Ajovy)

アジョビは、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質の働きをおさえることで片頭痛を予防する治療薬です。

皮下注射で使うタイプの治療薬で、特に片頭痛の発作が頻繁に起こる方や、これまでの治療で十分な効果が得られなかった方に向いており、注射の間隔を選べるため、自分の生活スタイルに合わせて無理なく続けられるのも大きな特徴です。

アジョビは、月に15日以上も片頭痛が起きるような重症の方に対しても、発作の回数を大きく減らす効果が確認されており、日常生活のつらさをやわらげ、生活の質(QOL)を高めることが期待されています。CGRPの働きをブロックすることで、発作を引き起こす神経や血管の過剰な反応をしずめ、安定した状態を保ちやすくしてくれます。

使用方法

アジョビの使い方は、月に1回、または3ヶ月に1回の皮下注射です。専用のペン型デバイスを使えば、自宅でも自分で注射できるので、通院の手間が少なく済みます。3ヶ月に1回のタイプでは、1度に3本まとめて注射することで長く効果が持続します。初めて使うときは、医療機関でしっかりと使い方の指導があるので安心です。

効果

このお薬は、片頭痛の回数を減らすだけでなく、発作が起きたときの痛みの強さや長さをやわらげる効果もあります。使い続けることで、「いつ発作が来るかわからない」という不安が軽くなり、仕事や家事など、日常生活に支障をきたしにくくなることが期待されています。

副作用

副作用としては、注射した場所に軽い痛みや赤み、かゆみが出ることがありますが、ほとんどは一時的で軽いものです。まれに、だるさを感じたり、アレルギーのような反応が出ることもありますが、発生はごく少なく、安全性は高いと考えられています。

アイモビーグ(Aimovig)

アイモビーグ(Aimovig)

アイモビーグは、これまでの治療ではなかなか効果が得られなかった慢性片頭痛の方に向けた新しいタイプの予防薬です。片頭痛の原因のひとつとされるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを抑えることで、発作を引き起こす神経の過敏な反応をブロックし、頭痛の回数そのものを減らすことを目的としています。

通院の負担も少なく、自宅での自己注射にも対応しているので、従来の予防薬や鎮痛薬では満足できなかった方、副作用が気になって治療を続けられなかった方でも、比較的安心して使えるという点でも注目されています。



実際に、長年つらい片頭痛に悩んできた方の中には、アイモビーグを使うことで発作の頻度や痛みの強さが大きく軽くなったと感じるケースも多く報告されています。副作用も少なめで、薬に敏感な方にも選ばれやすい治療法として、多くの医療現場で取り入れられています。日常生活や仕事への支障が減り、「辛い頭痛に悩まされなくて良くなった」という声も聞かれるようになってきました。

使用方法

アイモビーグは、月に1回の皮下注射で使用する片頭痛の予防薬です。使い方は自己注射が基本で、医師の指導のもと、自宅でも安全に使用できるため、通院の手間が少なく、忙しい方でも続けやすい治療法です。

効果

この薬を継続的に使うことで、片頭痛の発作が起こる回数が大きく減るだけでなく、吐き気や光・音に敏感になるといったつらい症状も軽くなることが多く、日常生活のしやすさが改善されたという声も多く聞かれています。

副作用

副作用としては、注射したところの痛みや軽い便秘などが見られることもありますが、ほとんどの場合は症状が軽く、治療を続けられる方がほとんどです。副作用の管理もしやすく、長く使っていくうえでも安心感のある薬として、多くの患者さんに選ばれています。

CGRP関連薬のデメリットは

CGRP関連薬のデメリットは

CGRP関連薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)は、片頭痛の予防薬として効果が期待されている一方で、他の片頭痛予防薬に比べ薬価が高額であるため経済的負担が最大のデメリットと言えるでしょう。3割負担の方で1本あたり13,000円前後の費用がかかります。エムガルティは初回のみ2本注射する必要があるため25,000円程の費用がかかります。期待される効果は高いものの、費用も高額になるため見極めが重要になります。

※薬価は厚生労働省が定めます。

まとめ

今回は「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」などの治療薬がどのように作用し、どのような方に適しているのかを解説してきましたがいかがでしたか。

これらのCGRP関連薬は、従来の片頭痛治療とは異なるメカニズムで作用し、特に慢性片頭痛や他の治療で効果が得られなかった方にとって大きな助けとなる治療法です。月に一度の皮下注射というシンプルな投与方法で、発作の頻度や重症度を抑える効果が期待できることから、日常生活への支障も少なく、多くの患者さんが使いやすさと効果を実感しています。

ながしま脳神経外科リハビリクリニックでは、患者様の訴えを丁寧に聞き、最適な検査や治療を行っております。特にCGRP関連薬では、治療効果だけでなく費用面も含め、しっかりとご相談のうえ治療方針を決定します。安心して治療を受けていただけるよう心掛けていますので、つらい頭痛でお悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。

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