脳神経外科ブログ

片頭痛と片頭痛の予防薬の種類を解説

2025.06.19
片頭痛と片頭痛の予防薬の種類を解説

「市販の頭痛薬が効かなくなってきた…」

「どうやってこの頭痛を治したら良いのか分からない…」

片頭痛は、多くの人が経験するつらい頭痛の一つです。ズキズキとした痛みだけでなく、吐き気や光や音に敏感になるなど、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

この記事では、片頭痛の症状や起こる仕組み、そして予防薬や治療薬に使われる薬剤とその効果について、できるだけわかりやすく解説していきます。片頭痛で悩んでいる方やそのご家族の方の参考になれば幸いです。

片頭痛とは

片頭痛とは、頭の片側や両側がズキズキと脈打つように痛む頭痛のことで、しばしば吐き気や嘔吐、また光や音に過敏になる症状を伴います。頭痛が起きる頻度は人それぞれで、月に1〜2回の方が多いですが、年に数回しか起こらない方や、週に1回程度の方もいます。

また、頭痛が始まる前に、目の前がチカチカしたり、手足にしびれを感じたり、言葉がうまく出なくなるなどの「前兆」が現れることもあります。

片頭痛の割合

片頭痛の割合

日本では15歳以上の人の約8.4%が片頭痛を経験していると報告されています。

男女別に見ると、男性は約3.6%、女性は約13%で、女性の方が約3倍多く片頭痛に悩んでおり、この傾向は欧米でも同じです。また、片頭痛には前兆のあるタイプが約15%、前兆がないタイプが約75%あります。

片頭痛のしくみ

片頭痛が起こる仕組みはまだ完全にはわかっていませんが、いくつかの考え方があります。そのひとつが「皮質拡張抑制(CSD)」という現象で、これは片頭痛の前兆期に脳の後ろの部分の血流が一時的に下がることを指します。

また、頭痛が起こる時は、脳の重要な血管とそれに伴う神経が絡み合った部分である「三叉神経血管系」という神経と血管の仕組みが関係しています。ここが刺激されると、神経から「サブスタンスP」や「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質が出ることで、血管を広げて周りの神経を圧迫し、痛みを引き起こすと考えられています。

さらに、硬膜周囲の細胞が活性化して炎症が起こることも痛みの原因のひとつです。

CGRP投与による頭痛の実験結果

CGRPという物質を人に投与した実験では、投与後すぐから40分間にかけて9人中8人が頭痛を感じました。また、投与から1時間から12時間の間に、全員が頭痛を経験しましたが、これも片頭痛の診断基準を完全には満たしていませんが、対照的に偽薬剤(プラセボ)を使ったグループでは頭痛を感じたのは1人だけでした。

 

この結果から、CGRPは片頭痛の発作と関係があると考えられており、最近では、このCGRPをターゲットにした新しい治療・予防薬剤も開発され、「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」といった名前で使われています。

CGRP製剤の効果について

CGRP製剤の効果について

CGRPを抑える薬剤は、片頭痛の痛みだけでなく、めまいや気分の落ち込み、光や音に敏感になる症状なども改善する効果が期待されています。日本の実際の治療データでも、「fremanezumab(フレマネズマブ)」という薬剤が効果的だと報告されています。

片頭痛の経過と症状の段階

片頭痛は主に4つの時期に分かれます。

①予兆期(発作の数時間から1、2日前)

体調の変化が起こり、気分が高ぶったり、逆に疲れやすくなったりし、焦りや不安感、あくびが増える、過眠、光や音に敏感になる、食欲が増えるなどの「興奮性」の症状と疲労感、集中力の低下、首のこり、食欲不振、便秘などの「抑制性」の症状が出ることが特徴です。

②前兆期(頭痛の直前か発作中)

目の前にギザギザの光が見えたり(閃輝暗点)、手足のしびれや言葉が出にくくなることがあります。症状がいくつか順番に現れることが多く、運動がうまくできなくなる場合は「片麻痺性片頭痛」と呼ばれます。

③頭痛期

実際に頭が痛くなる時期で、4時間から72時間続くこともあります。
頭のこめかみや目の周りがズキズキと痛むことが多く(片側の場合が多いですが、両側の人もいます)、吐き気や嘔吐、光や音への敏感さ、匂いに敏感になること、階段の上り下りなど動くと痛みが強くなることもあります。

④回復期(痛みがおさまった後)

頭痛が落ち着いても、疲れやすさや食欲不振が続くことや睡眠や嘔吐で痛みが改善することもあります。

片頭痛を防ぐためにできること

片頭痛を防ぐためにできること

片頭痛の予防には予防薬以外にも生活習慣の改善がとても大切ですので、以下の点に気をつけましょう。

①規則正しい生活を心がけ

寝不足や寝過ぎを避け、毎日同じ時間に寝起きすることが大切です。

②スマホやパソコンの使いすぎに注意する

特に寝る2時間前は使わないようにし、ブルーライトを避けましょう。

③ストレスをためない

自分に合ったリラックス方法を見つけて、心の負担を減らしましょう。

④バランスの良い食事をとる

空腹は片頭痛を誘発しやすいので、決まった時間に食事をすることが重要です。

⑤ビタミンB2やマグネシウムを摂る

これらの栄養素は片頭痛の頻度や長さを減らすのに役立つと言われています。

⑥誘発しやすい食べ物を避ける

ワイン、チーズ、チョコレートなど、片頭痛を引き起こすことがあるため、自分に合わないものは控えましょう。

⑦強い日差しを避ける

光が刺激になることがあるので、外出時はサングラスを使うとよいでしょう。

⑧適度な運動をする

無理のない範囲で体を動かす習慣を持ちましょう。

⑨人混みや大きな音、強い匂いを避ける

これらも片頭痛の引き金になることがあるので注意しましょう。

まとめ

まとめ

今回は片頭痛の症状や起こる仕組み、そして予防薬や治療薬に使われる薬剤とその効果について解説してきました。

片頭痛はただの頭痛ではなく、日常生活に大きな影響を与える病気です。まだ解明されていない部分も多いですが、CGRPという物質が重要な役割を果たしていることがわかってきていますので、生活習慣の見直しや新しい薬剤の力を借りて症状を和らげていきましょう。

ながしま脳神経外科リハビリクリニックでは、必要な場合にはMRI検査や血液検査、心電図検査などを行い、脳の状態だけでなく全身の症状を確認し一人ひとりの症状やお悩みに合わせた頭痛治療を行っています。つらい頭痛でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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